広告代理店の変更手順|データと計測を残して乗り換える方法

広告代理店の変更では、過去データを保持したままアカウント権限、MCCリンク、請求先、計測タグを順に引き継ぐことが重要です。乗り換え前後に確認すべき手順を解説します。

執筆: cotomu 広告運用ガイド編集部監修: 編集方針

広告代理店の変更で最初に守るべきものは、配信履歴、コンバージョン設定、タグ、請求と権限のつながりです。ここが残れば、新しい代理店は前任の運用を見ながら改善できます。

乗り換えは、広告アカウントを新しく作るより、既存アカウントの権限を整理して引き継ぐほうが基本です。Google広告ヘルプでは、既存のGoogle広告アカウントを、複数アカウントをまとめて管理するMCC(マネージャーアカウント)にリンクしても、元アカウントと履歴はそのまま残ると説明されています。2026年7月時点で確認できる公式情報に沿うなら、焦点は「データがある場所への正しいアクセスを残す」設計にあります。

ただし、前任代理店のMCCでコンバージョンを管理している、請求元が前任代理店になっている、広告主側に管理者がいない状態では、手順を間違えると計測や配信に影響が出ます。変更前に、どこまでが自社の資産かを分けて見ます。

広告代理店の変更で残すべきデータ

残したいデータをCSVで落としたレポートに限ると、乗り換え後の判断材料が足りません。広告アカウントそのものに残る履歴と、計測に使われる設定を分けて確認します。

  • 広告アカウントID
  • キャンペーン、広告グループ、広告、キーワード、オーディエンスの履歴
  • コンバージョン目標とコンバージョンアクション
  • Googleタグ、GTM、GA4などの計測経路
  • 管理者、標準、読み取り専用などの権限
  • MCCアカウントとのリンク状態
  • 請求先、お支払いプロファイル、請求書の扱い
  • Meta広告では広告アカウント、ビジネス、ページ、Instagram連携、ピクセルの権限

「レポートを受け取っているから大丈夫」と判断するのは危険です。レポートは結果の写しで、媒体が最適化に使う設定そのものは広告アカウント側に残ります。乗り換え後も同じ過去データを見るには、アカウントと計測設定を作り直さない設計が必要です。

変更前に自社の管理者権限を確認する

代理店変更の相談でつまずきやすいのは、いま誰が管理者なのかを社内で答えられない状態です。Google広告では、アクセス権の付与後も編集や削除ができます。公式ヘルプでは、請求書発行の設定や利用限度額の申請には管理者権限が必要とされています。また、管理者が1人しかいない場合、その人が対応できなくなるとタグにアクセスできなくなる可能性があるため、少なくとももう1人の管理者追加が案内されています。

切り替え前には、広告主側のメールアドレスで管理者権限を持つ人を確認します。担当者個人の退職や異動に左右されないよう、会社管理のGoogleアカウントを使うのが現実的です。新代理店へ最初から管理者権限を渡す判断は慎重で構いません。診断や初期確認の段階では、読み取り専用で過去配信、計測、権限、請求の状態を把握できます。

Meta広告でも同じ発想です。広告主側に管理権限がないまま進めると、ページ、Instagram、ピクセル、広告アカウントのどこかで承認待ちや権限不足が起こりやすくなります。

MCCリンクと請求先を同じ作業にしない

Google広告のMCCリンクは、複数の広告アカウントを管理するための仕組みです。既存アカウントをMCCにリンクしても、元のアカウントの履歴は残ります。一方で、請求先の変更は別の論点です。前任代理店が支払い元になっている場合、代理店変更時には請求先の変更が必要になることがあります。

Google広告ヘルプでは、請求先変更について、現在のお支払い元アカウントから新しいMCCアカウントへ移行リクエストを送る流れが説明されています。移行リクエスト後、新しい代理店は7日以内に承認または拒否する必要があり、操作がなければ自動的にキャンセルされます。既存のクライアントアカウントを代理店側で受ける場合は、Google側の審査を経て、問題がなければ48時間以内に承認されるとされています。

ここで急いで新アカウントを作ると、請求の問題は一時的に避けられても、過去の学習や計測との連続性を失うことがあります。MCCリンクは管理の入口、権限は操作できる範囲、請求先は費用負担の整理です。

計測を残すために見る順番

広告停止と同じくらい、配信中の計測不良も警戒します。広告は配信されているのに、コンバージョンが二重計測される、主要なコンバージョンが入札に使われない、前任代理店のMCC側で管理されていたコンバージョンを新代理店が編集できない、といった状態です。

Google広告では、コンバージョンアクションは購入、問い合わせ、電話発信など、ビジネス上価値があると定義した行動です。コンバージョン目標はそれらを整理し、入札やレポートに関わります。メインのコンバージョンアクションは入札の最適化とレポートに使われ、サブのコンバージョンアクションは通常、キャンペーンの最適化に直接使われません。

クロスアカウントコンバージョントラッキングを使っている場合、クライアントアカウントではそのコンバージョンを確認できても、編集できるのはMCCアカウントのみです。Google公式情報では、Google広告アカウントはアカウント固有のコンバージョンかクロスアカウントコンバージョンのいずれかを使用でき、両方を同時には使用できないとされています。既存のコンバージョンデータは失われないとも説明されていますが、編集権限の所在を知らないままMCCを外すと、運用判断が遅れます。

確認の順番は、媒体画面から始めます。

  • 主要なコンバージョン目標が何か
  • メインとサブのコンバージョンアクションがどう分かれているか
  • コンバージョンのデータソースがGoogleタグ、GA4、インポート、APIのどれか
  • Googleタグマネージャーの公開権限を誰が持っているか
  • サンクスページやフォーム完了イベントの仕様が変わっていないか
  • MetaピクセルやコンバージョンAPIの権限が広告主側にあるか

この順番なら、前任代理店にしか分からない情報と、広告主側で確認できる情報を切り分けられます。媒体画面の事実から権限の所在を追うと、前任代理店に依頼すべき作業も絞れます。

前任代理店に依頼すること

前任代理店に伝える内容は、感情的な文面を避け、作業単位に落とします。契約上の解約通知や最低契約期間は別途確認しながら、媒体側では次の依頼を明確にします。

  • Google広告アカウントIDとMCCリンク状況の共有
  • 広告主側管理者の追加または確認
  • 新代理店MCCへのリンク承認
  • 請求先変更が必要な場合の移行リクエスト対応
  • コンバージョンアクション、タグ、GA4連携、インポート設定の説明
  • Googleタグマネージャー、GA4、Metaビジネス関連権限の引き渡し
  • 未払い、請求書、返金、予算残の確認

ここで「全部引き継いでください」とだけ送ると、認識のずれが残ります。請求先の変更なのか、MCCリンクの追加なのか、タグ管理権限の移管なのかを分けて依頼します。相手が対応しやすい依頼にしたほうが、移行リスクを下げられます。

広告代理店費用の見直しも同時に進めるなら、運用手数料や最低契約期間の見方を整理したリスティング広告代理店の費用相場も確認材料になります。

新代理店に渡すものと渡さないもの

新代理店には、過去データを見られる環境と、計測を確認できる材料を渡します。ただし、移行前の診断段階でいきなり編集権限まで渡す必要はありません。現状把握なら、読み取り専用で足りる範囲が多くあります。

渡すべきものは、広告アカウントの閲覧権限、直近の配信目的、重要業績評価指標(KPI)の定義、コンバージョンの意味、ランディングページやフォームの仕様、過去に止めた施策の理由です。渡さないほうがよいものは、個人アカウントのログイン情報、使い回しのパスワード、社内の管理者権限そのものです。媒体が用意している権限付与の仕組みを使えば、ログイン情報を共有せずに確認できます。

無料診断を使う場合も同じです。Cotomuの広告アカウント診断は、Google広告・Meta広告の設定と計測を閲覧権限で確認するサービスです。勝手にアカウントを変更せず、成果、ROAS、削減額の保証もしません。

変更当日のチェック

変更当日は、大きな改善施策を同時に入れないほうが原因を追いやすくなります。請求先変更、タグ修正、LP改修、入札戦略変更を同じ日に重ねると、数値が動いた理由を特定しにくくなります。

最低限、次の項目を確認します。

  • 新代理店が広告アカウントを閲覧できる
  • 広告主側管理者が残っている
  • 前任代理店の不要な権限を削除する日程が決まっている
  • 請求先変更の承認状況を確認している
  • コンバージョン計測が当日も記録されている
  • GoogleタグマネージャーやGA4の権限が失われていない
  • Meta広告のページ、Instagram、ピクセル関連の権限が確認できる

権限削除は、確認が終わってからで構いません。先に外すと、未完了の請求先変更やタグ確認で前任代理店の協力が必要になったとき、作業が止まります。削除予定日を決めて、移行完了後に実行します。

データを残す乗り換えの結論

広告代理店を変更しても、既存の広告アカウント、計測設定、権限、請求の整理を順番に進めれば、過去データを見ながら運用を続けられます。Google広告では、既存アカウントをMCCにリンクしてもアカウント履歴は残ります。請求先変更が必要な場合は、MCCリンクとは別に、移行リクエストと承認の流れを確認します。クロスアカウントコンバージョンを使っている場合は、どのMCCが編集権限を持つかまで見ます。

広告代理店の変更前に見る軸は4つあります。広告主側に管理者がいるか、既存アカウントを使い続ける設計か、請求先変更が必要か、計測の編集権限がどこにあるか。この4点を確認できれば、データと計測を残した乗り換えに近づきます。

参考にした公式情報: Google広告 MCCアカウントとリンクについてGoogle広告アカウントへのアクセス権を管理するクライアントアカウントを別の代理店に移行する既存のクライアントアカウントを代理店に移行するクロスアカウント コンバージョン トラッキングについて